口臭治療をしていてのエピソード
もう数年前に来院された患者さんの話です。
口臭って悩むとここまでになるんだと思った症例です。
よくこんなことまで話してくれたと感心もしました。
その方は、どの位口臭に悩んでいたかというと、
「わたしは陣痛が全く痛みを感じなかった」と言うんです。
特に、聞き出そうとしたわけでもなかったのですが、
そういう話を始めました。
陣痛のことはよくわからないのです。
そして、この話が口臭とどう結びつくのかも想像できませんでした。
出産前って独特の呼吸をするじゃないですか?
出産の経験のある女性ならわかると思うのです。
「ふー、はっー、はっー」みたくやるんでしょ?
その口臭患者さんは陣痛の痛みより、
出産に立ち会ってくれた産婦人科医や看護婦さんに対して、
自分の口臭で迷惑をかけている、申し訳ない
という気持ちのほうが強くて、
陣痛は気にならなかったというのです。
その方は、主婦ですから、スーパーにも
買い物に行くんです。
でも、遠くに知り合いがいたりすると
立ち話をするのが嫌なんですね。
会話すると、相手に口臭をかけてしまい
申し訳ない、となるのです。
ですから、知り合いを避けるような行動をしてしまうのです。
わたしと口臭に関する問診をしても
私の方を向いてはくれません。
「いいんですよ、気にしなくて、遠慮なく
息をかけていいんですよ。商売ですから」
と声をかけながら、気持ちをリラックスさせたつもりです。
重症な例です。
口臭があるから、木馬歯科へ行こうという患者さんはいません。
まずは自分で解決しようとして
ネットで「口臭対策」みたいなキーワードで
検索すればたくさんの対策法が出ます。
色々やってみるんです。
でも、解決しなくて、口臭外来に来院するんです。
患者さんは嘘は言いません。
真剣なんです。
ですから、わたしも最高の力を発揮しようとします。
1ヶ月後には険しかった顔が優しい顔に変わりました。
よかったです。